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Feature

彫刻家 はしもとみおさん

一番生命力がある時ですね

 

というのは、彫刻家はしもとみおさんが、どうやって完成時を決めるのですか?と聞かれたときの答え。
思わず、おお、そうなんやと思ってしまう。

 

はしおとみおさんは、様々ないきものを彫られる彫刻家。
犬や猫だけでも何十種類。
そのほか、さる、かめ、リス、ブタ、クマ、ねずみ、うりぼう、カメレオン・・・。
最近は鳥羽水族館の依頼で大きなジュゴン! まで制作される。
彫刻だから、彫ろうと思えばいつまでも彫れるかもしれない。
でも、一番生命力もある時に、彫り終える。

私も以前、展覧会に行かせていただいたことがある。
会場いっぱいに、たくさんのいきものがひしめきあっている。
生命力の集まりだ。
展覧会というより、誰もがいきものと触れ合える空間。
ゴロンと寝そべっているワンちゃんをなでなでしたり、大きなクマの子と見つめ合ったり、
おどけた表情の子に思わず笑ったり。
もはや、動物園か、サファリパークのよう。

 

今回弊社のループ舎から出版されたのが、『気になってるん! 02 はしもとみおさん』だ。
スタッフ服部が中心となり、三重県のはしもとさんのアトリエにお邪魔した。
そのときのインタビューや、撮らせていただいた写真をまとめたものが本書。
はしもとさんの大切にしていることや、考え方が随所に感じられて、とても面白い。
アトリエも、作品が生まれる場所として興味深い。
詳細は本に譲るとして、特に印象に残ったことをひとつ。

 

はしもとさんの経験上、ペットを見送った後、辛くて、次の子を迎え入れられなかったり、ということはありませんか? という問いに、

 

ないですね。いつも死と向き合っているので。ペットロスっていうのは私にはないです。
(中略)
もちろん寂しいですけどね、先代の犬を思い出す時は。でも感謝しかないというか、一緒に頑張って生きてくれたというか。悲しいというより、ありがとうという気持ちです。
(中略)
この子もこの子の人生を全うしてもらってなんぼなので。この子が今幸せならそれで。

と答えられている。

 

 

ペットロスが、ないんだ、というところにまず驚いた。
私なら、喪失感でいっぱいになってしまうかも。
でも、しばらくしてから、改めて気づいた。
はしもとさんはペットロスがない、と言いきれるくらい、今、その子と向き合ってる。
自分もその子も人生を全うできるように。
愛情たっぷりに。
だから、ありがとうとう気持ちでいっぱいになれるんだろう。

 

常に死と向き合っているからこそ、彫刻は一番生命力のあるところで完成させられるんだろうな。
素材は「木」かもしれないけど、私たちがその子たちを目の前にしたとき、触ったとき、あたたかさみたいなものを感じるのは、はしもとさんが注いだ愛情をどこかで感じるからかもしれない。

感じ方や考え方は人それぞれでいいと思う。
でも私は少しでもはしもとさんのように、いきものや、植物と触れ合うときに、「今」を大切にして向き合っていきたいと思った。

そうだ、今日もひなたと遊ぼう。
ひなただって、私だって、今日という日は今しかないんだ!


▲イメージ写真。いつぞやのひなた。

 

またはしもとさんの作品に触れられるときがあれば、ぜひとも触れたいと思う。
みなさんももし機会があれば、ぜひ会いに行ってみてください。
五感が刺激されること、間違いなしです。

 

はしもとみお
彫刻家
楠から、様々な動物たちの肖像彫刻をつくる。
世界各国からのオーダーメイドの動物彫刻ほか、国内美術館や博物館での展覧会も開催。
さわれる彫刻、さわりたくなる彫刻を目指して、三重県にアトリエを構え、日々制作中。
インスタグラム→ www.instagram.com/hashimotomio/

出典 『気になってるん! 02 はしもとみおさん』ループ舎 

 

(ミヤガワ)